出産は予定日よりも5日早く、破水によって入院し、陣痛を促進するという形になった。
初産だし、特に問題が起こることも考えていなかったし、予定日の1週間前の妊婦健診でもまだ産まれなさそうみたいなことを言われたし、遅れるとばかり思っていたから、準備は70%ぐらいしていただけ。
それに、まさか破水だとも思わなかったぐらい、少量の水だった。
通常、破水すると24時間で陣痛がやってくるみたいだけど、私の場合、24時間以上経っても陣痛はこなかったので、陣痛促進剤を点滴で入れて、陣痛がくるのを待った。
薬を入れはじめたのが午前9時。その後30分ごとに助産師さんが血圧等の確認に来た。
昼食も普通に食べて、「まだですかねえ?」なんて話をしたら、「普通にご飯を食べられるぐらいなら、まだですね。このまま陣痛がこなかったら、明日また仕切り直すことも考えられます。」と言われた。
もう赤ちゃんに会える…と考えたらすぐにでも会いたいのに…
なかなか道のりは長い…。
付き添っていた主人も母も、もう今日はないかなとも考えざるを得ない様子だった。
主人も何もやることなしに、病院の小さな個室に閉じ込められてかわいそうにも思えた。
14時頃、生理痛のような痛みが表れた。生理痛には悩まされてきたから、これくらいの痛みはまだ耐えられた。診察室まで、まだ自分で歩けるくらい。
15時頃、信じられないぐらい痛みが強くなった。もうこれ以上は無理!という痛み。息をするのがやっとで、話したいことも話せないくらい。診察室に移動するなんてもう考えられない、入院中の部屋(陣痛室)での診察。
やっと子宮口が開いているということ。
やっと陣痛がきたのか!!
そこからはもう痛みとの戦い。それだけ。
信じられないような痛みが間髪入れずにすぐにやってくる。
助産師さんが言うように呼吸をして、いきみ逃しをする。
隣で主人も同じように呼吸法を伝えてくれる。
「それどころじゃないよ、痛いんだよー」と心の中で叫びながら(表にも出てたかもしれないけど)痛みに耐え続けた。
分娩台に乗ったのは午後5時。
歩くこともままならず、途中でしゃがみこんでしまったので車椅子で運ばれた。
想像していなかった痛みだったので、頭の中が大混乱。さらに初産だとお産にかかる時間が、陣痛が始まってから12時間ぐらいと聞いていたので、これがそんなにも続くのかと考えただけで、涙が出て怖かった。
でももう分娩室に行ってもいいの?と思いながら、分娩台に乗ると、今度は今までとは違う呼吸法をしろと言われる。
「息を吸えるだけ吸い込んで止めて、力一杯いきんでください。」
よく分からなかったけど、どうやらもう出してもいいみたいだと理解した。
主人が、助産師さんが言ったことを繰り返して言ってくれたおかげで、頭の中を整理して言われた通りにやってみた。
「もっと力入れていいよ。」
精一杯力を入れているつもりだったのに、もっともっとって…
いつまで続けるのか、そのうち体力もなくなっちゃうよと考えながら、何度か目で「赤ちゃんの頭が見えたよ」と言われた。
もう頭?ってことはもう終わりは近いの?
終わりが見えれば、あとは力を振り絞るだけ。
今まで以上に力いっぱいいきむ。
どうやら生物には、普通に生きていたら出ないぐらいの力を、出産とか特例のような大一番で出すことのできる力を秘めているみたいです。
あんな力は後にも先にも出産でしか出さないでしょう。
午後5時半、泣き声とともに男の子が誕生。
「ああ、終わった。」出産の喜びよりも、痛みが終わったことにほっとした。
「ふにゃあ、ふにゃあ」と柔らかなその泣き声に、思わず「かわいい…かわいい…」が止まらなかった。
それにしてもなぜ人類は、途絶えることなく増え続けているのでしょうか。
こんな痛みを経験したら、もう二度と嫌だと思うのではないのでしょうか。
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